大阪府堺市に計画した間口2.5間、奥行4.0間の木造3階建て狭小都市型住宅。住みなれた場所に必要最低限の土地を購入し、夫婦と子供一人の三人が暮らす為の家である。
周辺環境は約40年程度前に開発された均一な土地区画とその上に切り妻屋根のかかった木造モルタル二階建ての家が立ち並ぶ住宅地である。最近では少しずつ建て替えが進み、一定のリズムを崩すかたちで個別に建て替わってきている。
計画では北側道路面に対して切り妻にかかる屋根と、前面道路からの壁面後退を当時のルールに従い、空地に緑を植樹する事により、当時のゆとりのある通りの復活に期待を込めたて配置した。
内部は10坪三層の三階建てを、1階部分に普通車軽自動車の二台の車庫と水廻り、2階部分に居間と台所と納戸、三階に寝室である和室と多目的室という構成とした。その3層を床の延長として、そして光を下階に取り込む光井戸としての階段を設置し緩やかにつないだ。三階の多目的室と和室をわずかにスキップさせる事で階高を抑えつつ天井を多様に展開した。そして、2階、3階をつなぎながら北面の居間に直射日光がわずかにでも獲得できるように配慮した。
1階から3階に上がるごとに素材にグラデーションをつけ、次第に構造が明確になるような構成とした。狭小ながら、間口と奥行きが視覚的に確認できるプランと緩やかに縦につながる階段とでワンフロア10坪と思えない開放的で気持ちのいい空間が獲得できたのではないかと思っている。