工事が始まってから、現場でクライアントと現場定例打合せをします。
クライアントは基本的に家づくりについては素人です。インターネットで知識を得ることぐらいはできますが、体系立てて理解はされていません。そこにきて工事現場では現実にモノが出来上がり、そこには職人さんというプロが関っていますから、ある意味とても緊張されているわけです。自分の家であっても自分の家でないような感覚とでも言うのでしょうか。
設計の段階や、見積もりの段階などで、できる限り丁寧にコミュニケーションをとりながら説明はしていきますが、はっきり言って設計者が思うほどクライアントは理解はされていないものです。ある意味信頼を頂き、任せて頂いているともいえるのですが、私はそこに甘えず現場での定例打合せは現物を見ながら設計の意図や今後の工事を「理解」してもらう作業に重点を置いています。わかっていることを前提に進めません。
「わぁ!どんどん進んでいますね~」という言葉の奥に
(あそこは何でこうなってるんだろう?)
(まだ、あの部分はやらないのかな??)
(こうなるとは聞いてなかったような…)
というような不安が隠されていように思うからです。とくに現場はモノが出来上がっていきますから、不安はできるだけ長く抱えないようにタイミングよく取り除いてあげることが必要だと考えています。現場という場所で出来上がる過程の目に見える「モノ」を通じて、不安を取り除き「納得」に変えるコミュニケーションです。
・ここには断熱材が入りますが、ここには入りません、なぜかというと…
・これは通気止めといって、壁の内部に冷えた空気が上がってこないようにするための…
・これは筋交いといって、地震に耐えるための部位で…
・これも地震に耐えるための壁ですが、なぜ筋交いがないかというと…
・etc…
もうひとつは今後の工事を理解してもらう事ですが、これは現場でまだ出来ていないものですから、なかなかクライアントにイメージしてもらうのは難しい場面もありますが、なるべくイメージしやすいタイミングで、かつ変更も対応が可能なタイミングを現場と調整しながら執り行います。ここはもう身振り手振りで説明したり、職人さんや現場監督の手を借りたりしながら「この内容で進みますよ!?」とクライアント自身に決断してもらう作業です。私とクライアントで決めた設計内容ですが、現場でクライアントの暮らし方に大切な部分を「クライアント自身がが決める」という場面を大切にしています。そうすることでできたものに納得ができるのだろうと思っているからです。
家づくりは「共につくる」ことが大切です。クライアントとの現場定例もそのひとつなのです。