佐紀町の家

佐紀町の家は大和西大寺の東側、生活の便利性をもちながら細い路地と古い街並みが残る素敵な場所にあります。計画は築約45年の母屋と築約20年の増築部分にクライアントが新しく生活する為の場をつくることが目的です。母屋は大きな庭をもつ立派なお屋敷で、増築部分は後に部屋数を確保するために建築された何の変哲もない在来木造住宅でした。無造作に増築された部分と母屋との間には成り行きで出来た部屋で構成され、けっして使い勝手の良いものではなく、生活する上では欠点とみられていました。しかし、時の流れから見た時、この増築部も祖父の時代に次世代が住み継ぐ為に必要なものとして建築され、この場に住み継ぐ意思が表れたものなのではないでしょうか。私はその母屋と増築部がそっと手を繋いだような佇まいを残しつつ、違和感のない洗練されたものにしなければいけないだろうと思いました。内部については成り行きでできた間取りという欠点を計画し直すことで同じ場所が利点となるように考えました。欠点であった部分に生活の中心となるキッチンを設置し、そこを取り巻くように吹抜けをもつダイニング、リビング、小上がり、そして外部のデッキを配して、ぐるぐると回遊できるようなプランにすることで、生活の中心となる部分でいつも家族の気配が感じられ、環境とつながる、いろんな気持ちのいい場所を獲得することができたのではないかと思っています。今回のように「住み継ぐ」ということの中にはいろいろな想いがあります。私はその想いをかたちにする事で、世代を超えて愛着を産み、その愛着が「住み継がれる家の価値」へと変わっていくことを考えながらデザインするよう心がけています。

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写真全て:冨田英次氏

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