夢のはじまり~その2~

前回お話した、夢のはじまりの動機にはもう一つあります。
それは「かっこよさ」です。
田舎モノの私にとって、その滞在中の東京ライフは夢のようでした。
「東京」に存在する「ひと・もの・こと」全てがなんだかかっこよく「やっぱ東京はちがうわ!」と言いながら街を徘徊したものです。
そんな東京の中心で「環境デザイン研究所」の人々もまたまた輝いていました。
そこで働く人々、中でも寮生活を共にさせていただいた先輩達。建築の事、プライベートの事、皆で話している時、目が輝いていました。
沢山の知識を持ち、経験を積み、そして日々努力し、なにより建築を愛する姿勢に「かっこいいなぁ~♪このままここにずっといたいなぁ~」と思ったものです。
当然、研究所のトップの方々もかっこいい!
所長は口の周りにひげを蓄えておられ、いつもスーツ姿に眼鏡とシルクハットを身につけ、緑のジャガーに乗って颯爽と現れます。
建築のリーダーは白いシャツに革ジャン、ジーパン、もちろんひげを蓄えてポルシェに乗って颯爽と現れます。
まるでドラマの主人公たちのようですよね♪
田舎モノに憧れるなといったって「無理」でしょう!?
で、もうひとり。造園のリーダー堤さんです。
実は私はこの方に一番お世話になっていまして、期間中の仕事やお話も沢山させていただきました。
白髪交じりのぼさぼさ頭に無精ひげ、クタッとしたジャケットにノータイのシャツ。ヒョロッとした姿にゆっくりと温厚な喋り方。
確か乗り物は徒歩と公共交通。
そんな堤さんは「木」を「植物」を「知り尽くして尚奥深い」と背中でいっているような方でした。
お昼を食べに行く道中にふっと足を止め、路の脇に生えた花を指差して「これは○○という花。こんなところでもちゃんと育つんだ」の様な事を私なんぞに幾度と語りかけてくれます。
「建築は完成が終わり、造園は完成が始まり。建築の設計をするなら、造園の変化を意識して、建築の変化も設計に盛り込みなさい。」
「造園の模型の樹木の幹に銅線を使うのはなぜだか解るかね?それは銅は木と同じく朽ちていくからだよ。」
「美しいと思う風景には大概人の手が入っているんだよ。それを大きな意味で造園って言うんだ。そんな地味~な仕事をしとるんじゃ、わしは。」
など、話しきれないほどの大切な言葉を頂きました。
私はこの方に出会って、多くの人にでなく「自分と出会った人の心に残るような人になりたい」そう思いました。
そんな人たちの様になれて、その上で面白い建築の仕事が出来る。なんて事を世間も知らない学生が見せられたらそりゃ憧れますよね!?

そんなこんなで「この重要な時間と人達」は私に「夢」という大きなものを贈ってくれました。
これが私の「夢のはじまり」です。

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